QUEENは数々の名曲を世に出した伝説のバンドなので、一時期はハマって聴いていた。
とはいえ、残念ながら映画を観るまでの僕はQUEENのことを詳しく知っているとは到底いえなかった。
本作はあまりにも評判が良いので、懐かしい気持ちを抱きつつも、ついに映画館に足を運ぶことにした。
そもそも今の若い世代はQUEENというバンドすら知らない人もいるのではないか?
そんな人たちがこの映画を観て、次々とQUEENにハマっていくと聞いたが、確かにこれはハマる。
実際に自身で観てみて腹落ちした。
映画としての前評判
多くの批評家の間では、本作が傑作になる可能性は低いだろうと言われていた。
長編映画の構成力に定評あるブライアン・シンガー監督が製作終盤で降板するなどトラブル続きだったためだ。
トラブルは映画の制作現場において多々あるが、監督の降板というのは大きな問題だ。
ゆえに批評家筋の期待は薄かったのだが、ふたを開ければ辛口批評家の間でも絶賛の嵐だった。
あらすじ
70年代のロンドンにて、ファルーク・バルサラは出自のコンプレックスから名をフレディ・マーキュリーに改名し、夜な夜な街へ繰り出していた。
そこでボーカルが脱退し、頭を抱えていたブライアン・メイらのバンド「スマイル」に出会い、自分をボーカリストとして売り込む。
こうして結成されたバンド”QUEEN”はヒット曲を連発し、瞬く間に成功への階段を駆け上がるのだが、
出身もロンドンと自称したり、フレディの最愛の恋人メアリーとの関係に違和感を覚えたりと、前半は彼のコンプレックスや苦悩が描かれる。
まさにこの時の違和感というのは、QUEENを知っている人にはあまりにも有名な話である。
そう、自分が実はLGBT(女性を愛せないゲイ)なのではないか?というものだ。
その後の彼はメアリーとの別れや、バンドメンバーとのトラブルなど幾多の問題を抱え、最終的にはHIVにかかって命を落としてしまう。
この映画『ボヘミアン・ラプソディ』は、 フレディがそんな自身の悲劇的な運命に抗いながらも、力強く生き抜いた彼の生き様を描いた人間ドラマ
である。
映画としての構成
このようなアーティストをメインに据えた映画は、バンド結成の経緯や楽曲の制作秘話を主体にするのが王道だろう。
しかし本作は、彼らに対して詳しくないライト層にも大きな支持が得られる様な人間ドラマに仕上がった。
再現性にとことんこだわるために、ルックスや演技力にも定評のある役者を揃えた。
人間ドラマとはいえ、彼にまつわるドラッグやセックス関連の描写を極力抑えられており、どの世代にも訴求できる映画に仕上げた。
映画のコンセプト
この映画のコンセプトは何度も言うが、フレディの人間ドラマだ。
無論、彼らに詳しいファンにも十分満足できるほど音楽性にも触れた内容になっていながらも、人間ドラマとしてはLGBTのテーマもあわせ持っている。
『ボヘミアン・ラプソディ』は、 LGBTの人たちの気持ち をLGBTでない人に伝えるという視点において、非常にメッセージ性が強い。
トランスジェンダーの排除などで何かと物議を醸し出したトランプ大統領はこの映画の大ヒットに何を思っているのだろうか?
この表向きは音楽ファンに向けた映画でありながらも、作品の深くではフレディが自身の抱える問題と葛藤する様が
互いに阻害せずに同居し、結果として万人を楽しませる間口の広さを持った作品となっているのだ。
前述のどの世代にも、どの客層にも訴求できるというのはまさにこのことだ。
映画の見どころ
映画の序盤はバンドの成功の裏側で、主人公のフレディの苦しみや葛藤は、じわじわと積み重なり、重苦しい空気を作ってゆく。
だが紆余曲折をへてそれらを乗り越え、終盤にそれら全てを跳ね返す様な、壮大なカタルシスが用意されている。
クライマックスシーンのライヴエイドにおけるQUEENのライブパフォーマンスは、ロック史に残るあまりにも有名なシーンだが
それらが完璧な演出で再現されており、観るもの全てに大きな感動を波が訪れるのだ。
最後に
評価: 4.8
2018年の映画で1,2を争う名作!絶対に劇場で観るべき。
細かい時系列などは映画のご都合で脚色されているかもしれない。
だがそれがなんだ?この映画を通してフレディが僕たちに伝えようとしてくれていることは、そんな細かいことではない。
是非とも劇場に足を運んで、彼の生き様に存分に感化されてほしい。
僕は3回は観に行く予定だ。笑